センチメンタルの涅槃

読書、漫画、映画感想用。中二病と喪女をこじらせた24歳。吾妻ひでお、山田花子、真造圭伍、九井諒子などが好きです。ボーイズラブの話多し。

11月読んだ中で面白かったおすすめBL漫画5選・記録用(2016年11月)

 「ユーリ!!! on ICE」の怒涛のBL展開にきゃあきゃあ言ったり、現実のフィギュアスケートの方を追うのにも忙しくて気が付いたらあっという間に11月が終わっていた。(言ったかどうか分からないけど私は羽生くんファンなのである)

12月もそんな感じで終わると思う。

しかし、「ユーリ!!! on ICE」。普通に、キー局のアニメでこんなクオリティの高い盛大なボーイズラブをやられたらもう一体こっちはどうしたらいいんだよって勝手に商業BLの未来をも憂いてしまうくらいであるが、

あーはいはいナタリーとかが取り上げそうな感じねってのばっか読んでいた10月↓

 

 

barakofujiyoshi.hatenablog.com

 

に比べると、11月はタイプの違う商業BLに出会えたかと思ふ。

ということで11月編。お前はBLのことしか考えてないのか?って感じだが、BLのことしか考えてないんだよな…

 

 

『憂鬱な朝(7)』日高ショーコ (徳間書店) ☆大河系←?

 

何年か前に偶然手に取って、文字通りのたうち回るほどやられて以来、「憂鬱な朝」は、BLオールタイム・ベスト圧倒的ナンバーワン、殿堂入りなので(私は未だにこの衝撃を越えるBLに会えていない)、今更な~という感じはあるし、つーかまだこれ読んでない腐女子とかモグリだし、ってことでとにかく読めよとしか言いようがないのだけれど、

7巻発売にあわせてまた1巻から読み直す憂鬱な朝祭りを開催して、

あ~~~~おもしれ~~な~~~~~~と嘆息する限りであった

 

私が日高ショーコを好きなのは、主要登場人物つまり攻めと受け以外の人間たちも、ちゃんとその世界で血を持って生きていることです。

というのは通常、BL世界に於いては、攻めと受けしか「主要」ではないんですよ。それ以外の要素が多いと編集から文句を言われるし(多分)、だから、攻めと受け以外の人間共は、多くは、「話を動かす駒」でしかないことが多い。

バーやレストランの都合の良い相談役(それって、好きってことじゃない?みたいなアドバイスをする奴とか)、顔すら書かれない当て馬のヒステリー女、攻めないしは受けが二人で歩いているところを発見され(て嫉妬心を生み出す)ために出てくる女(大体姉か妹)、など、こういうのは要するに作者と攻め受けに都合のいい話を動かす駒なのである。

 

が、日高ショーコはそうじゃない、ちゃんと、それ以外の人物も「その人の行動原理」に沿って動いている。だから作品がぐっと血の通ったものになるし、

「憂鬱な朝」に関しては、これ若干誤解を招きそうな言い方だが、もはやBL部分いらねえんじゃ?ってくらい、お家騒動や、久世家・桂木家などの事業拡大物語、明治の産業開拓物語みたいな部分が面白い。あと私は、傲岸不遜のようで意外と暁人に理解のある桂木長男と、穏やかで人の良い次男の妙に噛み合ってないような会話と組み合わせがどんどん好きになってきました、

いやもうこれもはや大河ですよね大河。

ダウントン・アビーみたいにシーズン○とかでドラマ化すればいいんじゃないか、そういえば「花は咲くか」の方が実写映画化するみたいだが。

 

7巻では、そんな大河BL・憂鬱な朝のお家騒動・桂木の出自問題に、また一転する新たな事実、というのもありながら、桂木成長ターンだったのが泣けた。

巻を経るごとに暁人も立派に当主として成長していくのはもちろん見所だけれど、同時に、桂木もちゃんと人間として成長していく話なんですよ。

桂木家では妾の子として邪険にされ、養子候補として貰われていったはずの久世家でも、実子の暁人が生まれたことで無用の存在と化した(※本当はそうじゃなくてもっと複雑なんだが省略する)桂木は、これまで、どこにも自分の居場所がなく、仕事も誰かに仕えるばかりだったが、ここに来てようやく、自分が自分として生き生きと働ける場を掴みかけ、

 

「私にしかできない仕事を続けたいだけです」

 

なんて言葉を発するようになるのだ。ようやく、桂木智之にしか出来ない事業をみつけようとしている、1巻の、暁人憎し排除してやるだけを生き甲斐にしていたところ(「憂鬱な朝」の物凄いポイントは、1巻時点では、ツンデレでも照れでも何でもなく本当に受が攻を憎んでいるところから始まるの)からここまでの過程を追ってきた読者には感涙モノですよねも~~

しかし桂木智之、意外と(?)現代で言うところのホワイト経営者でワロタ。

 

 

『Cutting Age』どつみつこ (大洋図書) ☆サブカル寄り系

 

微妙に生々しい言い方ではあるが、これは割と私の性癖クリーンヒット…!

 

童貞が片想いしている相手(男)に、「初体験したいなら俺の彼女と3Pすればいいじゃん」とか持ちかけられるところから始まる話というあたりでもう、片想い相手の性格やクズっぷりがお分かりかと思うが、

私はね、こういう、人をゴミとしか思ってないような感じで余裕綽綽に振る舞い弄ぶキャラクターが、途中から、形成逆転して攻められ焦り余裕がなくなってく話が物凄く好きなんだよ!!!

あと、人を屁とも思ってないクズの一方で、恋人になると甘えたがりという設定も性癖を刺激される。

 

大人しそうなダサめの童貞キャラに見せかけて、いくときは意外とグイグイ愛をアピールする攻もいい感じであるし、

受の元カノがその場限りの捨て駒にされず、攻と、受け(クズ)の元カノが何となく結束して仲良くなっていく展開もよい。これも個人的好みだが私は、「一人の男を介し敵対心を経て繋がる男と女」(或いは一人の女を介し敵対心を経て繋がる男と男)みたいな関係にときめきを覚えるんである。何なら、常にそういうBLを書きたいと思っている。

同じ人間を愛してしまった者同士には、一旦は、ライバル心じみた憎しみのような感情が生まれるだろうけど、でも、「同じものが好き」というのは、この上ない結束になると思うんですよ、という意味で。

 

つーことで、性癖クリーンヒットBLを生み出してくれたどつみつこ先生、私の中の個人的2017年もっと売れていいBL作家ランキング入りが確定した次第である。(別に確定しても嬉しくないだろうけど)

 

 

『ひだまりが聴こえる』文乃ゆき (プランタン出版) ☆ストーリー系

 

今度実写化するくらい有名なので今更感溢れまくるが、私は、名前だけは知っていたがスルーしていたのをようやく今更読んで本当にやられた。

本当にやられた!!

こういう言い方はあんまり好きじゃないが、ボーイズラブ漫画の枠を余裕で越えてますよね、裏・「聲の形」っすよ。いや聲の形読んだことないけど。

何でスルーしていたかっていうと、主要登場人物(カップリング)の一人が、難聴という設定ということで、障害者モノにありがちな食傷気味な安易な感動路線かと思ってたんですよね。或いは、かわいそうで気の毒な障害者を、もう片方がよしよしと助けてあげる話とか。

いや、偏見を持って申し訳なかった、BLとか抜きにしてほんとうに、難聴者こそ読むべき漫画だと思った、というのは私自身、40dBくらいの軽度の難聴なんです。

日常会話では普通に喋っていることが多いと思うし小さい声でなければちゃんと聴こえるが、小さい声や男の人の低い声だと困ることも結構ある、でも別に障害者手帳が貰えるほどではないので、健常者として「普通」に仕事をしていかねばならない。「目が悪い」に比べて、「耳が悪い」というのは、何故か対応がそんなに整備されていないし理解も少ないように思う。(眼鏡なら1万円で買えるけど補聴器は30万円とかしたりね)

 

「ひだまりが聴こえる」が良いのは、そういう一見、「分かりにくい」難聴の存在をきちんと描いているところ。

森達也の「FAKE」で、佐村河内守も言っていたが、何となく、聴覚障害とかいうと普通の人は、クロかシロか、「聴こえるか」「聴こえないか」で捉えてしまいがちなところがあって、少しでも音や声に反応すると、「ほら、聞こえるじゃん!=嘘じゃん!OR大したことないじゃん!」とか思われるわけです。

でも、視力0.1の人が眼鏡なしでは街を歩けないのと同じように、ある程度は聴こえることもあるし話もできるが健常者よりは確実に聴こえておらず、日常に支障が多々ある人っていうのは、いるわけですよ。それを、「聴こえるんじゃん」って切り捨てられるのは、辛い。

 

この作品では、そういういわばマージナルな難聴者の、「大したことないじゃん」「聴こえるじゃん」っていう辛さとか、会話をいちいち聞き返すのが申し訳なくて黙ってしまって孤立していく、コミュニケーションが嫌になっていく苦しみとか、を丁寧に描いた上で、

「聴こえない時はそう言えよ、何回でも聴き返せよ、なんでお前の方が遠慮してんだよ、聴こえないのはお前のせいじゃないだろ!」

「平気かどうかを何でお前が決めるんだ!」

と、登場人物たちに、凄く、救われる台詞や場面が多々ある。

ともすれば自分の殻に閉じこもろうとする航平(攻)にまっすぐぶつかっていく太一(受)の言葉に、こちらまで救われるんですよ。

 

で、さっき、ボーイズラブ漫画の枠を越えたとか書いてしまったが、勿論これは、この上なく真っ当で素敵な素晴らしくクオリティの高い「ボーイズラブ」作品である。

あとがきに「BL成分が薄いと言われた」みたいなことが書いてあるけど、とんでもない!

キスしたりSEXしたりお前が好きだーだけがBLじゃないんだよ!

太一のおかげで航平は自分の殻を破り一歩ずつ成長し始め、短気ですぐバイトをクビになっていたような太一もまた航平に出会ったことで、自分のやりたいこと、自分が出来ることを模索し始める。聴こえる人も聴こえない人も皆がコミュニケーション取れる世界を作るためにできることはないかと。

 

あなたのおかげで世界が変わり、あなたのために世界を変えようとする。これがBLでなくてなんだ!!!!(号泣)

 

 

『それから、君を考える』小松 (プランタン出版) ☆切な系

 

商業BLにも、なんだか誰が書いても同じのような絵や話のものと、もうこれはこの人にしかかけないってのがあると思うんだけど、これはねっていうかこの人はね、今Cannaで連載している話もそうだけど、良くも悪くも

ひっじょーーーーに作家性が強いですよね!

もちろん作家性が強いことは、同じような話が日々大量消費されるBL漫画界に於いて名を馳せるにはこの上ない長所ではあるのだが、

悪くもっていうのは、漫画としては結構読みにくくはあるんだよ。 

小説かよ!? ってくらい文字が多くて息をつく間も無い怒涛の長いモノローグ、文学的な言い回し、例えばこういうの。

 

“その昔、私と周防くんは

倒錯的な関係にあった。

 

彼の挑発的な態度は

安っぽくて

陳腐だったけれど

私の心を捉えて放さない

強い吸引力があった。

 

私は彼が“命令”するときに

見せる酷薄そうな視線が好きで

 

いつもそれを甘受していた”

 

しかしそれが、それゆえにとても印象には残るのである。私はこういう、余韻が残る系BLにぐっと来てしまうタイプというのもあるが。

そして、作家性が強いというのは、男同士の関係性の描き方や至る話に繰り返される(作者がきっと描きたいのだろう)テーマの設定の仕方にもかなり表れている。

たとえばそれは、家族や家の呪縛だったり、○○な人間でいなければという苦しさ、狭小な地域で、親をトレースするようなゆく先の見えてしまう人生への絶望だったり、登場人物達は、今ある自分以外の自分になりたくて、もがく。

小松さんの漫画には、こういう、「自分を縛る何か」というテーマが繰り返し描かれていて、これが彼女の強い作家性になっているのだけれど、呪縛(※物理ではない)好きの私としてはこれだけで胸キュンである。

しかし、そうしてもがき苦しむことに必死な間は、自分の逃げたかった自分に寄り添い続けてくれていた存在に気が付かなかったりするもので、自分から逃げることは相手を傷付けるということでもあるのだ。

だからそんな残酷さを悟ることが、はじめて「君のこと」を考え始めるときなのであって、それは時には間に合わなかったり或いは修復できたりもするけれど、表題作のほかに収録されている、「Young oh! oh!」も「夜明け前が一番暗い」も実はそうした構造になっているように思う。

なので、このコミックにつけるには、これ以上ない絶妙なタイトルだよなあと思う。

 

 

『お守りくん』tacocasi (東京漫画社) ☆カワイイ系

 

最近のBLは随分お洒落になったもんですよねってこれ前も言ったが、これはね~もう表紙と絵がカワイイに尽きる! カワイイでしょ笑!

九井諒子とか田中相とかの系統でいい感じかつ、

全然画のタイプは違うけど、私の推し大島かもめ先生と同じく、決して正統派のキラキラBL風ではないのに、ちゃんと、キャラクターにBL漫画としてのそしてイケメンとしての絵の色気があるんですよ、そういう絵が描けるのはBLとしては強みですよね~

 

表題作も、「強い霊感体質の男子高生が、ある日、自分とは真逆の「霊をはじく」体質の少年に出会う」なんて一見ファンタジー設定ながら、でもちゃんと、良い意味で、無理のない「日常の恋の物語」してる。

カワイイジャニ顔が微妙にコンプレックスの男の子が、落ち着いていて無骨な同級生にちょっと憧れる感じ、そんな同級生から、(本当は霊を除けるためのお守りなんだけど)スキンシップを図られることで何となくその気になってしまう過程、霊除けだと分かりがっかりすることで気付く気持ち、

ファンタジー設定とは裏腹に、どこにでもいそうな素朴な男の子たちの間で交わされる感情が恋のようなものに変わっていく過程に、にやにやというか、にこにこしてしまう感じ。

 

同作家の、「Cab」で始まった、鬼の「表面作家」(人間界に戸籍等のない鬼の代わりに小説家として矢面に立つ)なんかも、こっからどうやってBLに転がっていくか楽しみである。